農地の相続(&持分放棄)

今回は農地の相続についてお話します。

農地とは?
一般的には「田」「畑」をイメージしますよね。
でも農地法上の農地とは、「耕作の目的に供される土地」と定義がされています。
つまり、登記簿上の地目が「田」「畑」だから農地というわけではなく、あくまで現況で判断されるわけです。

 

それはさておき今回のお話の中では便宜上、登記簿上の地目が「田」「畑」である土地の相続についてのお話をさせていただきたいと思います。

まず基礎知識ですが、農地を処分(売買・賃貸・贈与)するには、農地法の許可が必要となります。(要件も多く、色々手続きが煩雑)一方、農地を相続するだけなら、農地法の許可は不要です。

そして農地だからといって、相続登記をする分には、宅地などと変わることはありません。遺産分割協議で相続人を決め、あるいは法定相続通りに登記すればいいわけです。

だけど農地の相続には大きな障害があるのです。

農地の相続の問題点
1.農地を誰も相続したがらない(遺産分割協議がまとまらない)
2.法定相続すると共有者が増え、将来的にもネズミ算式に増え続ける
3.売れないならと第三者に贈与したいと思っても農地法の許可がいりハードルが高い
4.共有者間で贈与しあい単有にしたくともやはり農地法の許可がいる

例えば、田舎の農地を都会に住む相続人が相続するというケースを考えてみましょう。
相続したからと言って農業をするわけでもない場合、だれも農地を相続したがらないわけです。
売るに売れない、貸すに貸せない、持っていても固定資産税が毎年かかるだけという状況なら、だれしも欲しがりませんよね。

しかもその農地がすでに共有状態にあり、そのうちの一人がなくなりその相続人が複数人いて、みたいな状況だと、法定相続通りに相続登記をすると、数人、十数人、ひどいときは何十人という共有状態になってしまいます。

農地が何筆(複数区画)もある場合、仕方がないので、複数の相続人がそれぞれ何筆か(数区画)ずつ引き受けようとなっても、すでに共有状態だと、単有にするのも難しいという状況に陥ります。

先日、このような農地の相続のご相談を受けました。

農地だけでなく山林なども併せて20筆以上。
しかも現状でも5名の共有。うち3名に相続が発生という状況でした。
これらを法定相続通りに相続するとさらに複雑な共有状態になり、将来的に処分するにも複数の方の承諾がいるなど煩雑な処分になることは必至です。
そこでなんとか、20筆以上の土地を、相続人4名で分担しあい、単独所有にできないかというご相談でした。

そこで考えたのが、次の方法です。
1.まずは、誰がどこの農地・山林を最終的に単有所有するのか決定する。
2.1の決定通りに、すでに亡くなっている3名の相続登記(持分移転登記)を行う。
3.2.が終了しても元々の所有者で存命の方2名の所有権(持分権)が残ったままなので、それぞれの方に「持分放棄」をしてもらい持分移転登記をする。

ここでのポイントは、3.の持分移転登記の原因を「贈与」ではなく「持分放棄」としたことです
先に、「贈与」でも農地法の許可がいると書きましたが、なんと、「持分放棄」だと農地法の許可は不要なのです。
理由としては、「贈与」は双方の合意のもとの法律行為ですが、「持分放棄」は所有者が一方的に「いらない」と言ってるだけだから仕方がないという考え方でしょうか。

いずれにししても、以上のような処理で無事、それぞれの農地・山林はそれぞれの相続人の単独所有とできました。

もちろん、単独所有となったからと言って、農地を今後どうしていくかという問題は残りますが、複数の人が処分に関わることはないということだけでも今後の煩雑な処理は避けられたのではないかと思います。

いかがでしたか?
今、都会に住んでいらっしゃる方でも、いなかの親が農地を所有しているというケースは多いのではないでしょうか?

お困りになれたらぜひ相談にいらしてください。

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